不眠症
不眠と言えば多くの方が「睡眠薬を使えばどうにかなるのだろう」と考えがちなのではないでしょうか。
確かに歴史的に言えば、睡眠薬はもともと麻酔薬の親戚のような薬ですから、麻酔薬が効かない人がいないのと同様に、誰にでも効果が期待できるハズです。
しかし、麻酔薬のように強力なものを、麻酔するのと同じぐらい大量に服用したら、確実に意識を失うので、ぐっすりと眠れるようにはなりますが、同時に呼吸まで止まってしまうので、人工呼吸器の装着もセットでしなければならなくなります。
だから現代において実在する睡眠薬は、麻酔薬とは比べ物にならないくらいソフトなものに修正してありますし、服用する量も麻酔するときと比べてずっと少ない量になっています。
こういった事情があるので、睡眠薬によって「飲んだとたんに悩む間もなくバタッと倒れるように眠れる」ようになる方はまれです。むしろ「いまひとつ効いてるんだか効いていないんだかパッとしない」という方のほうが多いものです。
特に最近では、自然な普通の眠りを再現するような睡眠薬が開発されるようになっているので、不自然で普通ではない効き方は、ますます期待できないようになっています。
ということで、実際に睡眠薬を服用したときには、グッとくるような手ごたえを期待していても、そのような期待は見事に裏切られ、「ちっとも手ごたえがない。どうしよう」という焦りばかりが募り、かえって眠気が吹っ飛んでしまうという空回りに終わることが多いでしょう。
それよりも、「何も手ごたえがないなあ」と感じても、騙されたと思って素直に横になっておいたほうがいいでしょう。
そして、のんびりと釣りをしているような気分で自分の心や体の状態を観察して、「コレってもしかしたら薬の影響でリラックスしてきたってことかもしれない」と思えるところが出てくるのを待っているほうがいいでしょう。
睡眠薬の物足りなさを嘆くより、自然で普通の睡眠がどのように促進されるのかを感じてみようと、楽しむようにするのです。睡眠薬によるほんのわずかの効きぐあいを、自分の心身の変化の観察者の立場で、興味深く観察してみるのです。
不眠症の一番やっかいなところは、眠ろうとすればするほど、そのプレッシャーでかえって目が冴えてしまうことがあるということです。「ゴールにたどりつこうとするればするほどゴールから遠ざかってしまう」だなんて、とても不思議なことですよね。
これに対する対策法を以下の動画で解説していますので、ご興味のある方はご覧ください。
ほとんどの不眠対策の本では、この問いに対する答えは、「あまり眠ることに執着しすぎると逆効果になるから、すぐに眠れずとも気にしないようにしましょう」の一言で終わっています。というのも、このテーマはとてもややこしいので、なかなか上手には説明しにくい内容なのです。
ですがこの動画では、この避けられがちなテーマだけに焦点を絞って、しかも30分以上の時間をかけて、じっくりと解説してみました。
この動画の(数分程度の短い動画が流行っている昨今の風潮に反した)あまりの長さに、この動画を聞き終わる前に眠ってしまったら(←実はコレが真の狙いです!)私の作戦成功になります。
逆に、不幸にも長時間の動画に耐えきって全部を聞くことができてしまったら、私は作戦を失敗してしまったことになりますが、でもその一方で、「眠ろうとすればするほど逆効果」という仕組みをしっかりと理解できるようになるハズで、だからその対策も、しっかりと立てられるようになるハズです。
だから「どちらに転んでも不眠症対策にはなる」というカラクリになっています。
ところで、不眠症の中には、体や脳の病気が隠されていて、そちらの治療をしなければならない場合もあるので注意が必要です。
その代表は睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に呼吸が止まって酸欠状態になって深い眠りに入ることができない)や、むずむず脚症候群(寝ているときに足がムズムズして落ち着かなくてまとまった眠りが確保できない)、REM睡眠行動異常(夢を見ているときに体も同時に動いてしまう)などです。
その場合には、程度によっては、睡眠障害専門の治療機関や神経内科などに受診する必要があります。